勉強は好きでした。小さい頃、「大学に行くと好きな研究ができる」と教えられていました。
もう15年ほど前になりますが、僕はど田舎にあって、国立で、理系の単科大学に入学しました。入学した頃はそれなりに希望を持っていましたが、1~2年の間は教養科目が多く、その間にすでにやる気をなくし、まぁ、アルバイトばっかりやっている学生となってしまいました。
大学はあまり行かなかったけど、本はかなりの冊数を読んでいたし、相変わらず勉強に対する意欲はあった方に思います。
さて、3年生になり、研究室に入りました。僕は食品化学を専攻し、豆とローカルな果実を扱う研究室に入りました。数人の先輩は「カテキングルコシドの単離」に関する研究や「カテキングルコシドを合成する微生物」に関する研究をしていました。
(知らない人のために……カテキングルコシドとはお茶のカテキンよりも体に良いと考えられる物質で、小豆に多く含まれています。現在、茶カテキンを含むトクホの商品がかなり販売されていることを考えると、単離や合成に成功すると、商業価値はかなり高いことが想像できますよね。)
研究室に入ってから、少しして、自分の研究テーマを決める話になりました。正直、僕はあまりカテキングルコシドには興味が湧きませんでした。僕は食べるは大好きで、体に良いかどうかよりも美味しいかどうかにしか興味がなかったワケです。しかし、時代は食の機能性成分に関する研究が大流行中でした。そして、それらの多くの研究が成功したおかげで、現在トクホが一般的な言葉となり、商業的にも多くの成功を生み出したことを考えると、あながち間違った流行ではなかったように思います。15年前っていうと、トクホなんて研究者とか食品企業に勤める人とか一部の人しか知らなかった言葉でした。
けれど、とにかく僕は興味がわかなかったワケです。それで、小豆の匂い成分の分離に関する研究をしようと思い、それに関する発表を行うと、教授が一言。
「その成分に食品機能性があれば面白いんだけどね。」
さらりと却下されました。食品機能性はともかくとし、確かに面白味に欠ける内容だと思いました。そして、自分のプレゼン能力にも問題があったかな、と少し反省し、数日後には別の研究テーマを発表しました。
研究テーマは「小豆由来成分による洗剤の可能性に関する研究」としました。そして、まずは界面活性剤の危険性に関する話をしました。実はシャンプーの主な成分である界面活性剤って、体に悪いんです。実験用のマウスにシャンプーを塗り続けると、下の写真のような酷い状態になります。(この写真、15年前に使ったものと同じだwまだネット上に残っていてよかった。インターネットって偉大♪)
そして、さらにシャンプーは浸透力がかなり高く、シャンプーをした直後に指先から採血をすると界面活性剤が検出されたという実験のデータを見せました。
その後、平安時代に編纂された「延喜式」という書物に小豆を粉末にした澡豆(そうず)と呼ばれるものを洗浄料として使っていたことが書かれていた話をしました。
また、小豆に含まれるサポニンと呼ばれる物質が泡立つこと、シャボン玉のシャボンと同じ語源であること、乳化作用があること。乳化剤と界面活性剤とは構造が似ていて、油と水の親和性のバランスの差があるという話など、十分な可能性があることを並べたてました。
また、危険性の少ないシャンプーの開発など、商業価値についても触れました。
その結果、教授が言ったのは……
「非常に面白い。でも、機能性成分がないとねぇ……」
最終的に僕は大学を中退しましたとサw