ここでの仕事内容で面白かったのは、お天気カメラの操作・カメラマン補佐などです。
どうってことない放送局の屋上についているお天気カメラを操作するだけの仕事です。
しかし、面白いのは生放送でやるということです。実際に僕が操作しているお天気カメラの映像が、天気予報のバックやエンディングで放送されます。
このお天気カメラ、なにげに高機能でした。上下左右にパンでき、ズームもかなり効き、光を星のようにするフィルタが付いており、いじっていると結構楽しかったのを覚えています。
しかしまぁ、初めのころは本当にドキドキで、手が震えました。生放送中の緊張感ってナカナカすごいもので、全員がピリピリしていました。
「1カメ(カメラが2台あり、放送中のカメラを切り替える)」とか
「スーパー(字幕スーパーを出す)」とか
「ブイ(録画映像を流す)」とか
様々な合図とともに放送中の映像が切り替わります。時には時間があまり、アナウンサーにアドリブで15秒持たせるように指示が出たりします。
そんな中、ド素人の僕の操作するお天気カメラは揺れました。ズームアウトはスムーズにできず、早すぎたり遅すぎたりしましたw
そして、それが放送されているという……(^^;
風でお天気カメラが揺れたってことにしてください(T-T)
そんな僕も1年経つ頃には、ずいぶんと器用にできるようになりました。
時間が余った時にはエンディングのお天気カメラをゆっくり動かしてしっかりと映像を見せたり、時間がない時にはサッと動かしてピタッと止めたりと、ちょっとしたことには対応できるようになりました。
慣れてくると、アレは楽しいものです。ちょっと仕事してやってる感じがします。
そして、ちょっとした創造性を楽しむこともできます。
星が綺麗な日は星を、星が出ていなければ夜景を、夕日が綺麗な日は夕日が良く見えるように、雨が降っている日は水滴がしっかり見えるように……。
その日の状況に合わせた様々な映像を流します。ちょっと職人芸な感じがしますね♪
三脚・バッテリー・ライトなどを持って、カメラを回す人の後を追い、お手伝いをする仕事です。
かなりの体力が必要です。まぁ、体力はある方だったので、それは問題なかったのですが……。
平日は専属のカメラマン補佐の方がいるので、アルバイトの僕は主に休日だけを担当していました。
休日の取材はいいところ1本で、記者さんかカメラマンさんのどちらかが出て、カメラも回し、記事も書くといった感じでした。
記者さんの時は良いのですが、カメラマンさんの日の出勤は、慣れるまでは本当に恐怖でした(T-T)
記者さんはカメラの扱いは素人なので、動きものんびりで僕の手伝いが追い付いてから、撮影する感じでした。
しかし、カメラマンさんは良い映像を取ることに真剣です。指示を聞き逃さないように、遅れないように、重い荷物を持って必死でした。
それでいて、カメラマンの方は芸術家肌の人が多く、気性が激しく、突然キレるし大変でした(^^;
これも1年経つ頃には随分と慣れてきます。慣れると面白く感じるから不思議です。
相変わらず、カメラマンさんのお手伝いは大変でしたが、指示を先読みできるようになったことが大きいように思います。
例えば……
現地に到着したり、屋外から室内に入った時は、きっと「シロ(ホワイトバランスのこと)」を取るだろうなと白いメモ帳を出す準備をしたり……
到着直後か取材終了直後にはきっと外観を取るだろう……と、三脚を広げる準備をしたり……
被写体が高さ的に見えにくい時は、三脚を上げたがるだろうな……と、三脚のストッパーを外す準備をし、カメラを持ち上げてピタッと止めた瞬間にストッパーをかけたり……
暗いな……と思った時にはガンライトを準備しておいたり……
ただ単に気配りと言えば気配りかもしれないですが、自分がカメラを回している気になって動くことで、うまくいくようになりました。
僕が一緒に仕事をしていたは「報道」という部署でした。
ある日、その局の飲み会がありました。それなりに高級なお店で、アルバイトは無料で楽しく参加させていただきました。
2次会はカラオケのあるスナック的なところでした。
副部長が歌っていた時のこと、突然揺れました。そこそこ大きめの地震です。
その途端、歌っている副部長も含め、その場にいた全員が携帯電話を取り出しました。
警察、消防、気象、各方面へ震源、被害の発生についての確認です。
その時、思いました。
「ああ、この人たち、24時間休みないんだ……」
それから一年経った頃のこと、僕は休日に出勤していました。
その日の取材も終わり、大してやることもなく鳴らない電話番をしていました。
この仕事、やることがない時は本当にやることがない。その日出勤の記者さんとダラダラ過ごしていました。
それでも、18時までは居ないといけません。何か起こる可能性もあります。
僕は一人、長めの廊下を通って喫煙所に行き、煙草を吸い始めました。
少しして、消防車のサイレンが聞こえました。
急いで煙草を消し、走り出すと廊下にカメラを持った記者さんが待ち構えています。
この切り替えの早さ……、いつの間にか僕にも染みついていました。
次回は京都でイタリアンレストランの厨房で働いたお話です。